第1話「王様と詐欺師」
この物語は、王イ・ホンがせじゃ嬪アン氏を亡くして以来、朝鮮に7年間続いている「禁婚令」(若い女性の婚姻を禁ずる命令)が軸になっています。歴史的に見ても、このような国家規模の婚姻禁止令が出される背景には、君主の個人的な感情が国政に大きな影響を及ぼすことがあり、その展開が興味深いです。
王が亡き妃を忘れられず、心を閉ざしてしまったことで、朝廷内外であらぬ噂が広がっていく様子は、まさに当時の朝鮮の複雑な宮廷政治を描写していると言えるでしょう。王が唯一心を許すのは、義禁府の都事であり友人でもあるイ・シノンだけ。その親密さが、さらなる噂を引き起こすのも、権力の周囲で常に渦巻く陰謀とスキャンダルを連想させます。
そんな中、密かに婚姻を成立させてきた占い師イェ・ソランが物語の鍵を握っています。彼女が密かに運営する占い茶屋「愛達堂」で、禁婚令の抜け道を提供しながら、庶民の自由を守る姿は、まさに逆境の中で立ち上がる民の逞しさを象徴しています。このようなキャラクターが持つ芯の強さと、時代背景に対抗して生き抜く姿は、歴史ファンにとって心惹かれる要素です。
また、王が禁婚令の噂の出所を探るため、シノンを伴って愛達堂に潜入捜査を行う場面では、物語の緊張感が一気に高まります。特にソランが「王は男として役立たず」という大胆な噂を流し、さらに婚姻方法を違法に教えている姿には、彼女の狡猾さとしたたかさが光ります。逃げようとした彼女が王に捕まり、最後には「月下老人」に憑依したふりをするシーンは、思わず息を呑む展開です。
ソランが王に「嬪宮を手放して欲しい」と訴える場面では、王の未練を断ち切ろうとするソランの策略が見事に描かれています。王が涙を流しながらその言葉を聞き入れる姿には、彼の内面の苦しみが深く感じられ、視聴者としても胸を打たれます。
この第1話は、単なるロマンスを超え、権力と人間関係の複雑さ、宮廷内外の陰謀が絡み合った濃厚な物語です。今後、ソランと王の関係がどのように発展し、禁婚令がどう解消されていくのか、歴史ファンとしては目が離せません。