連続テレビ小説「カーネーション」の第65話のあらすじは以下の通りです。
第11週「切なる願い」「カスミソウ」
第65話は、戦時下の厳しい時代における家族の絆と、人々の想いが重層的に描かれています。特に、泰蔵の出征と善作の病が物語の中心に据えられ、戦争が日常生活に及ぼす影響が鮮烈に表現されています。
この時代、昭和18年(1943年)は、日本全体が戦争に巻き込まれており、出征する兵士を見送る家族の姿は、日本各地で繰り返されていた光景です。泰蔵の出征が決まり、彼を送り出す糸子と善作、そして周りの人々の様子が描かれます。特に善作が、自らの足で泰蔵を見送りたいと言い出す場面には、家族としての強い意志と責任感が表れています。身体の衰えを感じつつも、息子を送り出す最後の瞬間をしっかり見届けたいという善作の決意が胸に響きます。
善作が泰蔵に、自らの火傷の真実を告白するシーンも印象的です。自分の過ちを認めることで、家族に対して誠実であろうとする善作の姿は、昭和の厳格な父親像と重なります。戦争という極限の状況下にあっても、家族に対して正直でありたいという善作の気持ちは、当時の人々の誇りや責任感を象徴しています。
その一方で、善作が力を振り絞りながらも倒れてしまう姿は、戦争が人々の生活にどれだけ大きな負担を強いていたかを感じさせます。糸子がそんな父を介抱し、物陰で涙を流す奈津の姿を見つけるシーンでは、戦争が引き裂いた人間関係の複雑さがにじみ出ています。かつての絆が、戦争によって傷つき、壊れながらも、心の奥底では互いを思い合う人々の姿が深く描かれているのです。
善作が病に倒れ、家族がその看病にあたる場面も、当時の家庭の厳しさを表しています。戦時中の医療環境は決して整っておらず、家族が支え合って病気に立ち向かうしかない状況が続いていました。それでも、糸子は「絶対に治す」と自分に誓い、家事や商売にも全力で取り組む姿勢を崩しません。彼女の強さと、家族への深い愛情が、このエピソードを通じて強く感じられます。
また、八重子がファッション誌を持って糸子を訪ねるシーンでは、戦時中であっても人々のオシャレへの想いが失われていないことが示されます。戦前の平和な時代を懐かしむ糸子の姿は、過去の幸福な日々と、今の厳しい現実との対比を感じさせ、観る者の胸を打ちます。
第65話は、戦争によって引き裂かれた家族と、逆境に負けずに前向きに生きる糸子の姿が印象的に描かれており、この時代を生き抜いた人々の力強さと共感を呼び起こすエピソードです。