連続テレビ小説「カーネーション」の第59話のあらすじは以下の通りです。
第10週「秘密」「ヒメウツギ」
第59話は、糸子の心の揺れと周囲の反応を描いたエピソードであり、視聴者にとって一層感情移入しやすい回となっています。戦時下の不安定な状況に加え、夫・勝の浮気疑惑が浮上し、糸子はこれまでとは違う新たな試練に直面します。
物語の冒頭では、糸子が勝の浮気を疑うきっかけとなる写真を見つける場面が描かれます。歌舞伎座で会った女性と写った一枚の写真。それを目にした瞬間、これまでの幸せな時間が急に崩れ落ちるかのように、糸子の心には様々な感情が交錯します。ショールを買う際の勝の様子も、今では女遊びに慣れた男の仕草だったのではないかと疑ってしまう糸子。さらに、自分が勝にとって「女性」としてではなく「稼ぎ手」として見られていたのではないかという苦しい思いに囚われます。
この疑惑を抱えながらも、糸子は一人で悩みを抱え込むしかありません。そんな彼女の気持ちを知らない父・善作は、勝がまだ大阪にいることを知り、糸子を誘って面会に行こうと提案します。しかし、この提案に糸子は激怒します。善作の「男の浮気の一つや二つたいしたことない」という言葉が、さらに糸子の怒りを煽り、糸子の心の中に渦巻く苦悩はますます深まるばかりです。男たちが互いの浮気をかばい合う姿勢に嫌気が差した糸子は、奈津のもとを訪ね、気持ちを打ち明けることにします。
料亭「吉田屋」の奈津は、糸子にとって気心の知れた存在。しかし、彼女もまた最近、自分の夫が芸子と逃げてしまったばかりで、糸子の悩みにすぐに共感できる状態ではありません。糸子が勝の浮気疑惑を打ち明けると、奈津は冷たく「自分の夫のことは自分で考えろ」と突き放します。この一言は一見冷酷に思えますが、実際には奈津なりの現実的なアドバイスであり、戦時下の厳しい現実を反映しています。
それでも、奈津は最後に糸子に向けて、彼女らしい励ましの言葉を投げかけます。「出征したらもうどうでもいい、しゃきっとせえや」。この言葉には、戦争という避けられない運命の中で、女性たちがどう生き抜いていくかを示唆しているように感じます。戦争が家庭に及ぼす影響は計り知れませんが、その中でも自分をしっかりと持ち、前を向いて進んでいかなければならないというメッセージが込められているのでしょう。
このエピソードは、戦時中の女性の強さと脆さを象徴するものです。戦争によって家族が引き裂かれる中、糸子は自分の心と向き合い、これからの人生をどう切り開いていくかを問われます。浮気疑惑に揺れる彼女の姿は、時代背景を考えると、単なる一家庭の問題以上に、戦争がもたらす個人の苦悩と葛藤を浮き彫りにしています。