NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の第39話のあらすじは以下のとおりです。
第8週 「それでも海は」
第39話では、新次(しんじ)の心の葛藤が深く描かれ、震災後の傷を抱えながらも向き合おうとする姿勢に心を打たれます。前回のエピソードで新次が行方不明となり、その後、震災前に家族と共に過ごしていた家の跡地で泥酔した状態で発見された場面から、物語はさらに重厚な展開を見せました。新次は、ただの酔っ払いとして描かれていたわけではなく、その裏にある心の闇や葛藤を語り始めるのです。
新次が心を開いたことで明らかになったのは、息子の完(けん)の成長を一緒に喜びたかったという深い思いでした。漁師として成長した亮(りょう)がメカジキを大量にあげ、その成果を心から誇りに思いながらも、誰ともその喜びを分かち合えない孤独に苦しんでいたのです。その心の奥底には、震災で妻の美波(みなみ)を失い、家族を失った喪失感が色濃く残っていました。新次のこの言葉には、父親としての誇りと、それでもなお過去に囚われてしまう悲しみが垣間見えます。
そして、その心の支えとなったのが亜哉子(あやこ)でした。亜哉子は新次に対して、病院に行くよう説得し、彼を支えてきました。新次が病院に行く決意を固めたのも、亜哉子の励ましがあったからこそです。しかし、耕治(こうじ)は冷静にこう言います。「それでも新次は過ちを繰り返すだろうが、前に向かってくれればそれでいい」。過去を乗り越え、未来を見据えようとするその姿勢には、どんなに辛くても前に進むことの重要性が込められています。
時代背景として、東日本大震災から5年が経過したこの時期、復興の兆しが見え始めるものの、心の傷は簡単に癒えるものではありません。新次が抱えているのは、物理的な損失だけではなく、家族との絆が断ち切られてしまったという深い孤独です。このエピソードは、震災を経た日本の多くの人々が経験した心の傷と、その再生を描いています。
新次の迷いと葛藤、そしてそれを受け止めようとする周囲の人々の温かさが、このエピソードをさらに深みのあるものにしています。漁師として生きるという誇りと、家族との絆を再び結びつけるためには、時間と共に変化し続けるものを受け入れなければならない。そんな葛藤が、登場人物一人一人の心情に織り交ぜられて描かれているからこそ、物語はさらに引き込まれていくのです。新次の心の旅路は、まさに復興の象徴でもあり、希望を失わずに前を向く力強さを示しています。